日本は四季がありますので春夏秋冬を感じる色がそれぞれありますね。世界的に見ると気候風土も違いますし、文化的背景も違いますので、 色から受け取る印象は民族間で異なります。
そこで今回は、日本が誇る重ねの色目についてご説明したいと思います。
1.平安時代
さかのぼること平安時代は宮廷文化でした。皆さんが思い浮かべる宮廷には、着物を着ているお姫様や女官の様はすぐ思い浮かべることができるでしょう。(ひな人形自体は平安時代にはありませんので写真は十二単のイメージです)
2.かさねの色目
かさねの色目という言葉には二通りの意味があり、一つは十二単のことでありこれを漢字で書くと「襲の色目」となります。
もう一つは「重ねの色目」と書き、着物の袷の表裏の色のことです。現代とは違い、化学染料が発達していないので繊細な色を着物に表現することは難しかったため、表と裏に異なる色の生地を使い、表側にうっすら色を見せるということをしていました。
具体的には、現代であればピンクの着物はありますが、そのような赤に白を混ぜた色が簡単に出せなかったため、着物の袷の表側が白、裏に赤の生地を使い、うっすらピンクの着物を着ているように見せて春の桜などのイメージで着物を着ていたのです。
これは女官の素養であり。季節の色の着物を身にまとってないと、教養のない人とみなされていました。その際に世界で一番早いと言える配色辞典が日本ででき上りました。
3.夏の重ねの色目
2には一例をあげましたが、もちろん夏の季節をイメージする色の組み合わせはほかにもあります。
少し気づいたことがあるかと思います。それは2点あります。
(1)「青」と表記があるのに色は「緑」であること。
(2)現代人が青と言っている色の組み合わせが少ないことです。
(1)に関しては、信号も緑信号なのに、我々は青信号と呼んでいます。
細かいことは文化人類学の域ですが、ざっくりいうと「青」と「緑」は両方とも「青」と呼んでいた時期があった、さらに「緑」と「青」の区分けは民族間で若干異なると理解していただければよいです。青、青緑、緑の分類の領域を研究した論文もあるはずです。(詳しいことをお知りになりたい方は、こちらをどうぞhttps://news.mynavi.jp/article/20170427-green_light/)
また、(2)については、日本で着物に着色する場合は植物染料が主だったためです。青は、藍染めなど色を出すことができましたが、藍染めが頻繁に用いられるようになったのは江戸時代以降ですから、平安時代は少なかったのかもしれません。
4.現代の夏のカラーイメージ
夏は白や寒色系が日本人に好まれています。同じ部屋でも赤い部屋と青い部屋を比べると体感温度が3度ぐらい変わるという実験もあります。
クッションだけでも涼しさが変わるのはつたわるでしょうか?
5.夏の着物に向く色
色相について:寒色系(青や藍色、)や白に模様があるもの。
しかし、そうなると青い色ばかりの着物になってしまいます。そこで、中性色や暖色系も明度を高くすると(白が多く使われている明るく薄い色)も涼しく感じられます。
左から寒色系、中性色、暖色です。半襟を蛍や金魚にする、帯留めをガラス素材にするなど小物にも可能ならこだわりましょう。(手作りもおすすめです)
6.まとめ
夏は寒色系でまとめると自分にも他人にも清涼感が感じることができます。
ですが、低彩度、高明度にするとどんな色でも着用可能です。ファッションは色以外に素材や小物も重要な役割を占めますので、工夫して、夏着物や浴衣を楽しみましょう!
☆プロフィール☆
AFT認定色彩講師 札幌市立大学 大学院 製品デザイン専攻 2019修了
修士 (デザイン学)
現在 北海道大学 文学院 博士課程 人間科学専攻 在学中
札幌芸術の森 ボランティア彫刻解説員
北海道薬科大学 元非常勤講師「医療色彩」北海道科学大学 元非常勤講師「歴史と文化」